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2018.02.02
第12回 症例検討会(小児部門)を行いました。
テーマは「重度移動障がいを呈した脊髄性筋萎縮症児のPower Mobility(電動車いす)導入について」でした。
*補足情報:小児慢性特定疾病情報センターより抜粋
https://www.shouman.jp/details/11_11_30.html
脊髄性筋萎縮症の症状について
I型:重症型、急性乳児型、ウェルドニッヒ・ホフマン(Werdnig-Hoffmann)病
発症は出生直後から生後6ヶ月まで。フロッピーインファントの状態を呈する。肋間筋に対して横隔膜の筋力が維持されているため吸気時に腹部が膨らみ胸部が陥凹する奇異呼吸を示す。定頸の獲得がなく、支えなしに座ることができず、哺乳困難、嚥下困難、誤嚥、呼吸不全を伴う。舌の線維束性収縮がみられる。深部腱反射は消失、上肢の末梢神経の障害によって、手の尺側偏位と手首が柔らかく屈曲する形のwrist dropが認められる。人工呼吸管理を行わない場合、死亡年齢は平均6~9カ月である。
II型:中間型、慢性乳児型、デュボビッツ(Dubowitz)病
発症は1歳6ヶ月まで。支えなしの起立、歩行ができず、座位保持が可能である。舌の線維束性収縮、手指の振戦がみられる。腱反射の減弱または消失。次第に側彎が著明になる。II型のうち、より重症な症例は呼吸器感染に伴って、呼吸不全を示すことがある。
III型:軽症型、慢性型、クーゲルベルグ.ウェランダー(Kugelberg-Welander)病
発症は1歳6ヶ月以降。自立歩行を獲得するが、次第に転びやすい、歩けない、立てないという症状がでてくる。後に、上肢の挙上も困難になる。
Ⅳ型:成人期以降の発症のSMAをIV型とする。小児期発症のI、II、III型と同様のSMN遺伝子変異によるSMAもある。一方、孤発性で成人から老年にかけて発症し、緩徐進行性で、上肢遠位に始まる筋萎縮、筋力低下、筋線維束性収縮、腱反射低下を示す場合もある。これらの症状は徐々に全身に拡がり、運動機能が低下する。また、四肢の近位筋、特に肩甲帯の筋萎縮で初発する場合もある。
SMAにおいては、それぞれの型の中でも臨床的重症度は多様である。
脊髄性筋萎縮症の治療について
根本治療はいまだ確立していない。I型、II型では、授乳や嚥下が困難なため経管栄養が必要な場合がある。また、呼吸器感染、無気肺を繰り返す場合は、これが予後を大きく左右する。I型のほぼ全例で、救命のためには気管内挿管、後に気管切開と人工呼吸管理が必要となる。II型においては非侵襲的陽圧換気療法(=鼻マスク陽圧換気療法:NIPPV)は有効と考えられるが、小児への使用には多くの困難を伴う。また、全ての型において、筋力にあわせた運動訓練、理学療法を行う。III型、Ⅳ型では歩行可能な状態の長期の維持や関節拘縮の予防のために、理学療法や装具の使用などの検討が必要である。小児においても上肢の筋力が弱いため、手動より電動車椅子の使用によって活動の幅が広くなる。I型やII型では胃食道逆流の治療が必要な場合もある。II型の脊柱変形に対しては脊柱固定術が行われる。
株式会社PLAST
小児部門プラストキッズ kids@plast-project.jp